地層とは、厚さと広がりをもった層状の岩体のことです。
伊豆ジオ遺産では、地下のマグマまたは地表に出た溶岩が作り出した地層と、堆積過程で特徴的に堆積した地層、熱水により変性した地層など、伊豆半島で観察できる代表的な地層を紹介します。(但し、専門的な分類とは異なるものもあります。)
- 柱状節理:マグマが冷え固まる際に収縮してできる柱状の割れ目
- 板状節理:マグマが冷え固まる際に収縮してできる板状の割れ目
- 放射状節理:マグマが冷え固まる際に収縮してできる放射状の割れ目
- 岩脈:地層にマグマが貫入して板状に冷え固まったもの
- シル:地層にマグマが水平に貫入して冷え固まったもの
- 枕状溶岩:海底で噴出した玄武岩質の溶岩が海水に触れて急冷され、枕のような塊となる。
- 水冷破砕岩:海底で噴出したマグマが、海水で急冷されて、破砕されたガラス質の岩石
- アア溶岩:粘性のある溶岩の表面が冷え固まりながら流動することで表面がガサガサとなった溶岩
- クリンカー:アア溶岩の表面にできるガサガサの岩石
- パホイホイ溶岩:粘性の少ない玄武岩がゆっくりと流れると、表面が滑らかな溶岩となります。
- 縄状溶岩:パホイホイ溶岩流の末端にできる縄状のしわ
- 火山弾:火山から噴出したマグマが飛散しながら冷え固まって落下した64mm以上の大きさを持つもの
- スコリア層:火山から噴出したマグマが、シブキ状の多孔質で暗赤色の礫となって降り積もった地層
- 降下テフラ:火山から噴出した火山灰や軽石が風に流されて、火口から離れた場所で降り積もった地層
- 軽石火砕流:火山から噴出された軽石を多く含み、高速で流れくだったもの
- 平行層理:風化・侵食された砕屑物が水流で運搬されて、水底で堆積してできた平行のシマシマ
- 斜交層理:水底で緩い傾斜面を流れ下った砂礫が堆積してできた斜めのシマシマ
- ハンモック状斜交層理:暴風などの波によって皿のような凹部と緩やかな凸部で形成されるシマシマ
- 泥流堆積物:火山噴火や崩壊で堆積した土砂が大雨などで、泥流となって下流で堆積したもの
- タービダイト:陸上または海中で、土砂を含んだ乱泥流が、より深い海底で堆積してシマシマが形成されます。
- 砂泥互層:タービダイトは、灰褐色の泥岩と黒色の砂岩がシマシマの層となって堆積することがあります。
- ローム層:火山砕屑物の中の粘土やシルトや土壌からの土埃が風に巻き上げられて、離れた場所で降下・堆積したものが層状となる。
- 年縞:長い年月に降り積もった土埃が湖沼の底に堆積してできたシマシマ
- インブリケーション:(覆瓦状構造)水流により、水底にある岩石などが、水流を向いて配列される。
- チャネル構造:海底斜面に生じた地滑りにより、地層が削りこまれ、そこに別の地層が堆積
- 玉ねぎ状風化:地層や岩石の表面が丸くひび割れている
- 荷重痕:軟らかい堆積物の上に重い堆積物などが重なると、境界が変形し、凹凸のある形になります。
- 火炎構造:荷重痕の変形が進むと、火炎構造が形成されます。
- スランプ構造:水底の地滑りにより、未固結または半固結の地層が,水底を塊となって滑り落ちてできる。
- 逆級化構造:砕屑物が堆積する過程で、下から上へ粒子サイズが次第に大きくなることを逆級化といいます。
- ペペライト:マグマが水を含んだ堆積物の中に貫入して急冷し分解したことで形成された凝灰岩または角礫岩
- 熱水変質:岩石を構成する鉱物が熱水やガスと化学反応して別の鉱物に変化する作用
- 石英脈:熱水が岩石の割れ目に入り込み、冷えて固まる際に割れ目に石英の結晶ができます。大きな結晶に成長したものが水晶です。
- リーゼガング:岩石中に鉄を含む地下水の浸透で形成された年輪状のパターン
- タフォニ:。岩に染み込んだ海水が小さな隙間に塩の結晶を作ります。この結晶が成長して隙間も大きくなります。結晶が雨水などで溶けて風化により大きな穴となります
- 穿孔貝:海岸の岩石に穴をあけて、それをすみかとする二枚貝類の生痕
- 化石床: 化石が密集して層をなし水平方向にかなり連続性をもつものを狭義の化石層という。地層内で化石を多産する部分が含まない部分をはさみ断続的に横に並ぶのは化石床
- 生痕化石:生物が活動した痕跡などが化石として発見されるもの
- 火山豆石: 球状に固まった火山灰であり,ちょうど大豆や小豆のような大きさの固まりである
- 疑礫:水による浸食あるいは混濁流によって生じた未固結の泥岩などの堆積物の岩片が,別の堆積物中に取込まれて礫状になっているもの
- スレーキング:堆積岩などが乾湿繰り返しにより形態を変化させて土砂化する現象
地層の代表的な見どころ
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南伊豆エリア・俵磯マグマ地層・柱状節理
爪木崎の西にある柱状節理の岩場は、俵磯と呼ばれます。海底火山に貫入したマグマが横に広がって、冷え固まる時に柱状節理ができました。その後の数回の隆起により、波食されて段々ができたようです。
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西伊豆エリア・八木沢西マグマ地層・板状節理
八木沢港西の海岸の崖には小下田安山岩類が露頭していて、板状節理を成している場所もあり、様々な表情を見せています。
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南伊豆エリア・逢ヶ浜マグマ地層・放射状節理
弓ヶ浜の東にある逢ヶ浜の岩場の崖には、地下のマグマが貫入して冷え固まった際に、放射状に広がった節理ができ、その後に波食されて断面が露頭しています。
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南伊豆エリア・子浦の蛇下りマグマ地層・岩脈
龍崎の海食崖の凝灰質砂岩の地層を、蛇下りと呼ばれる岩脈が垂直に貫入しています。(マグマは地下から上昇しています)岩脈の中には柱状節理が発達し、凝灰岩と接する両端には急冷縁が見えます。
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南伊豆エリア・入間マグマ地層・シル
入間港の突堤から西の崖下に、白い一色凝灰岩層に水平に貫入する黒い岩脈(シル?)が見えます。
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西伊豆エリア・餅山溶岩地層・枕状溶岩
一色の仁科川沿いには、餅山と呼ばれる枕状溶岩の露頭があります。ぼた餅の小豆のようにぶつぶつとした枕状溶岩は約2000万年前の海底に噴火した姿を見せてくれます。
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西伊豆エリア・松崎弁天島溶岩地層・水冷破砕岩
松崎の弁天島は、島全体が水冷破砕岩でできています。島を一周できる遊歩道があります。
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東伊豆エリア・城ケ崎まえかど溶岩地層・アア溶岩
城ケ崎海岸をつくった大室山溶岩流の末端の崖では、表面がガサガサとした溶岩流で覆われています。ガサガサした溶岩流を、ハワイではアア溶岩と呼びます。
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東伊豆エリア・城ケ崎イガイガ根溶岩地層・クリンカー
イガイガしたトゲのようなアア溶岩が平らな岬の表面を覆っています。溶岩流の表面が冷えて固まってできた殻が、後から流れてくる溶岩に押されてバラバラに砕かれてできました。アア溶岩がバラバラに砕かれた岩石をクリンカーと呼びます。
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北伊豆エリア・鮎壺の滝溶岩地層・パホイホイ溶岩
鮎壺の滝の落ち口付近の三島溶岩流(玄武岩)の表面はなめらかです。滑らかな溶岩流を、ハワイではパホイホイ溶岩と呼びます。
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北伊豆エリア・楽寿園溶岩地層・縄状溶岩
楽寿園の常盤の森では、太い縄が束のように連なったように見える縄状溶岩が見られます。溶岩流の先端部で、冷え固まり始めた表面が、内部の熱い溶岩の動きにより、しわしわができました。
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東伊豆エリア・稲取スコリア丘溶岩地層・火山弾
稲取のスコリア丘の断面には、火口から噴出した溶岩が空中で紡錘状になった火山弾がスコリア層にめり込んでいます。
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中伊豆エリア・巣雲山溶岩地層・スコリア層
伊豆スカイライン沿いの崖に、巣雲山から噴出したスコリア丘の断面が見られます。
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中伊豆エリア・田原野溶岩地層・降下テフラ
旧大仁東小西の露頭で、箱根火山からのパミスや達磨山からの降下テフラの地層が観察できます。
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中伊豆エリア・蛇喰川溶岩地層・軽石火砕流
蛇喰川の東側の台地は、約3200年前に噴火したカワゴ平火山からの軽石火砕流が堆積したラハールです。黒曜石の破片も見つかります。
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西伊豆エリア・沢田公園堆積地層・平行層理
沢田公園の駐車場の崖には、海底火山から噴出された軽石・火山灰が堆積した細かい縞々の地層を見せています。
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南伊豆エリア・柿崎・弁天島堆積地層・斜交層理
弁天島の崖には、平行層理の間に、斜めに交差する地層が見られます。斜交層理と呼ばれ、浅い海底で海流の動きによって土砂が流動した痕跡です。
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南伊豆エリア・入間の千畳敷堆積地層・ハンモック状斜交層理
千畳敷の凝灰岩が侵食された断面には、浅い海底の波浪によって形成されたハンモック状の斜交層理が見られます。
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北伊豆エリア・清住緑地堆積地層・泥流堆積物
清住緑地の湧水が侵食した崖(東側)には、約2700年前に流れ下った御殿場泥流の堆積層が露頭します。
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南伊豆エリア・富戸ノ浜堆積地層・砂泥互層
一色凝灰岩層の水底土石流に挟まれる砂泥互層のシマシマが見られます。
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北伊豆エリア・沼津IC近く堆積地層・ローム層
富士火山や箱根火山由来のローム層が厚く堆積しています。
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東伊豆エリア・小川沢堆積地層・年縞
馬場の平の北を流れる小川沢は、地すべりによりせき止め湖が出現しては消滅したようです。そのせき止め湖の底にシルト層が長い間降り積もって、堆積して年縞ができました。
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南伊豆エリア・恵比須島堆積地層・インブリケーション
恵比須島の北東部の露頭では、凝灰質砂岩と礫岩の互層があり、礫岩層には、水流により礫の扁平面が水流に向いたインブリケーションが見られます。
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南伊豆エリア・恵比須島堆積地層・チャンネル構造
恵比須島の凝灰質砂岩の層を、上部の水底土石流が流れた際に、下部の上面を削ってできた凹凸のチャネル構造が見られます。
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西伊豆エリア・白川堆積地層・玉ねぎ状風化
白川出合近くの川床に海底での土石流が堆積した地層が露頭しています。凝灰岩が風化して、玉ねぎの皮のように剥けた表情を見せています。中には核となった礫岩が見られることもあります。
他の見どころ -
西伊豆エリア・蛇島堆積地層・荷重痕
堂ヶ島の蛇島の喫水線には、へびがうねっているような地層がみられます。海底に堆積した火山灰層の上に流れてきた土石流の重みと動きで、火山灰層がかく乱された模様です。
他の見どころ -
伊豆エリア・恵比須島堆積地層・火炎構造
恵比須島の南端の千畳敷寄りの崖は侵食されて、液状化によるシルトの火炎構造がみられます。
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南伊豆エリア・恵比須島堆積地層・スランプ構造
恵比須島の南端の千畳敷寄りの崖には、液状化によるものと考えられる小さなスランプ構造が見られます。
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中伊豆エリア・梶山堆積地層・タービダイト
狩野川の左岸・大平にある地ビール工場近くの対岸に、シマシマの地層が見えます。湯ヶ島層群の地層で、海底に堆積した軽石・火山灰が地震などにより、更に深い海底に乱泥流として流れ落ちることがあります。何回も乱泥流が発生して堆積すると縞々の地層ができます。その後の伊豆半島の衝突で隆起した際に、傾いたようです。
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南伊豆エリア・伊浜堆積地層・逆級化構造
伊浜の南東の海食された崖には、水底土石流の堆積が逆級化した地層が見えます。
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南伊豆エリア・板見港その他地層・ペペライト
板見港の崖に、凝灰質砂岩に高温の溶岩が接触して、珠状のペペライトができています。
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西伊豆エリア・黄金崎その他地層・熱水変性
黄金崎の馬ロックは、海底火山からの噴出物が堆積したものが隆起して、その後に噴火した棚場火山などのマグマに温められた熱水が周囲の鉱物を溶かして、地下の噴出物の割れ目を上昇していく途中に、周囲の古い地層を変質させたものです。
他の見どころ -
西伊豆エリア・地蔵淵その他地層・石英脈
地蔵渕の露頭には石英脈が走り、脈の周囲には、沸石などが見え隠れします。
他の見どころ -
南伊豆エリア・赤根島その他地層・リーゼガング
赤根島には白浜層群の多様な地質が観察できます。角礫岩に見えるシマシマはリーゼガング現象によるものでしょうか?
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南伊豆エリア・石室神社その他地層・タフォニ
熊野神社から石室神社を見ると、水冷破砕岩が塩類風化された大きな窪みにすっぽりと神社がはまっています。
他の見どころ -
南伊豆エリア・赤根島その他地層・穿孔貝
赤根島の波打ち際には、凝灰質砂岩をマテ貝などの穿孔貝が削った跡が見られます。
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南伊豆エリア・今井浜その他地層・化石床
今井浜の海岸の南には、岩礁が平らに波食された波食台が広がります。白浜層群の砂岩・凝灰岩には化石が含まれています。
他の見どころ -
南伊豆エリア・柿崎弁天島その他地層・生痕化石
弁天島の海側の波食棚には、無数の生痕化石が見られます。
他の見どころ -
南伊豆エリア・入間千畳敷その他地層・火山豆石
千畳敷への遊歩道の途中の崖には、砂泥互層に挟まれた火山豆石(ダマ状の火山灰が圧力で扁平になる)が見られます。
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西伊豆エリア・石部海岸その他地層・疑礫
石部海岸の南側の崖下の地層には、疑礫のようなものが挟まります。
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中伊豆エリア・門野その他地層・スレーキング
門野大見川の川床では、海底での乱泥流が堆積したタービダイトが川床に露頭します。泥岩部分はスレーキングで風化しています。